突然、「キャーン」と鳴き、動かなくなったり、脚を引きずっている、背中を丸めて寝ていることが多い、もしそんな症状が出たら、椎間板ヘルニアかもしれません。ミニチュア・ダックスフンドの人気が出て、わんちゃんの椎間板ヘルニアも認知度が上がったと思います。肢の短い犬種イコール椎間板ヘルニア、のイメージがあると思いますが、実は、椎間板ヘルニアを起こすのはミニチュア・ダックスフンドだけではないんです。
今回は、椎間板ヘルニアについて、そのメカニズム、かかりやすい犬種、治療法などについてお話を進めたいと思います。

椎間板ヘルニアってどんな病気?

椎間板ヘルニアの病態についてお話しする前に、椎骨、つまり背骨と椎間板の構造について少し説明をしますね。通常、骨は関節をつくり、関節で曲げ伸ばしをします。背骨は四角い骨がブロックのように並んでいて、関節を作りませんが、柔軟に体の曲げ伸ばしをすることができます。これは椎間板のおかげなんです。椎間板は背骨と背骨の間のクッションとして衝撃を吸収し、背骨同士がぶつかる事なく滑らかな動きができるような働きをしています。
椎間板ヘルニアとは、この椎間板が変性してしまい、正しい位置からとび出て、背骨の中を走る神経を圧迫してしまう病態です。突出した椎間板は突出部位だけでなく、その周囲にも炎症を起こして神経にダメージを与えます。そして、神経に対するダメージにより、痛みから麻痺に至るまで様々な症状を示します。また、背骨は長く、首から胸、腰、尻尾にまで続きますので、ヘルニアを起こした位置によって症状の出方も違ってきます。

どんなわんちゃんがかかりやすいの?

椎間板ヘルニアには、好発する犬種やかかりやすい年代があります。
ダックスフンド、ウェルシュ・コーギー、フレンチ・ブルドック、チワワ、シー・ズー、トイ・プードル、ビーグルなどの軟骨異栄養犬種では、3歳から6歳で罹患のピークを迎えます。軟骨異栄養犬種では、成長に伴って椎間板の変性が早い時期から起こります。そのため、2歳頃から6歳頃という動きの活発な時期に椎間板が衝撃を吸収できず飛び出してしまいます。
また、非軟骨異栄養犬種では、加齢に伴った椎間板の変性が原因です。ジャーマン・シェパード・ドッグ、ラブラドール・レトリバーなどで発症が多く、8歳から10歳で罹患しやすいと言われています。

椎間板ヘルニアの症状

さて、椎間板ヘルニアではどのような症状がみられるのでしょうか。背骨といっても長いので、部位別に紹介していきたいと思います。
頸部椎間板ヘルニアの場合には、頸部の痛み、こわばり、前足のびっこ、首の筋肉の硬直なとが出ます。食事の際、頭を下げることを嫌がることもあるかもしれません。
胸腰部椎間板ヘルニアの場合には、背中の痛み、背中を丸める姿勢、脚を引きずる、または歩けないなどがみられます。ひどくなればなるほど症状も重く、後肢だけでなく、膀胱や肛門周囲の筋肉も麻痺してしまいます。その結果自力で排尿や排便ができなくなります。
どの程度神経がダメージを受けているのかによって、症状の重症度が違ってきます。症状として、痛み→痛覚消失→麻痺、の順に重度になり、専門的には5つのグレードに分けます。実際に神経がどの程度ダメージを受けているのかは脊髄の造影検査や、MRI検査などを行って、詳しく調べ、状態を把握します。

椎間板ヘルニアの治療

椎間板ヘルニアは治るのでしょうか?
人の脳梗塞と同様、症状が出てから治療するまでの時間により予後も変わります。同じ重症度でも、早く処置に入りいち早く神経周囲の炎症を治めることができた方が予後は良好です。手術適応の場合でも、発症から48時間以上経過したものでは、回復率が悪いと言われています。
実際の治療は、重症度によって、内科的に治療をするか、手術をして外科的に治療をするのかが決まります。手術をするかどうかは、痛覚が有るか無いかが、おおよその基準になります。
軽症の場合には、消炎剤や鎮痛剤を投与しながら、ケージレストといってケージに入れて安静に過ごすことで回復が見込めることが多いです。突出した部分は小さくても、取り除かれたわけではありません。一度回復しても、また症状が繰り返し出ることがあり、気をつけて日常生活を送ることが必要になります。
重症な場合には、手術で神経を圧迫しているところを取り除き、手術後はリハビリを行います。最近は、リハビリの専門家が在籍したり、専門のリハビリ施設を持つ動物病院も増えてきました。ダメージを受けた神経細胞が再生することは難しいので、麻痺が残ってしまうことも少なくありません。しかし、リハビリを続けることで少しずつ麻痺を改善することも可能です。

もし後遺症が残ったら

どんなに適切な対応をしても、後遺症が残ることもあります。
後遺症として1番多いのが、後肢の麻痺です。麻痺が残ると肢を裏返しにして引きずって歩くので、爪の付け根に擦過傷ができることが多いです。その場合には、靴下を履かせるなどして皮膚を守ってあげてください。また、オーダーメイドのわんちゃん用の車椅子もありますので、作ってあげるのもよいですね。
肢の麻痺だけにとどまらず、膀胱や肛門周囲の筋肉の麻痺が残ることもあります。その場合は排泄が自力で行えなくなるため、オムツを装着したり、膀胱を圧迫して人為的に排尿させてあげないといけません。また、膀胱に感染を起こし、膀胱炎にもなりやすくなります。膀胱炎になると尿の臭いが強くなります。その場合には抗生物質を投与して対応します。

椎間板ヘルニアの予防

軟骨栄養性犬種では、特に活発な年齢で好発するので、防ぎようがない場合もありますが、背骨に負担をかけないような生活をすることは大切です。具体的にどうしたらよいのかを挙げていきますね。

⚫︎後ろ足だけで立つような姿勢をさせないようにする
高い段差を上ったり、私たちに飛びついたりさせないようにしましょう。背中が反り返り、背骨に負担をかけてしまいます。
⚫︎抱き上げるときには、お腹に手を入れて抱えるようにする
脇の下だけを持ち抱き上げると、背中が反り返り、わんちゃんも足をバタバタさせてしまい背骨に負担を掛けてしまいます。お腹の下に手を入れ、背中を丸めるように抱いてあげると背骨への負担が軽くなります。
⚫︎適性体重を保つ
わんちゃん達は二足歩行をするわけではないですが、やはり太り過ぎると動きや反応が鈍くなります。無理な姿勢をとることで、通常では負担がかからない部位に負担がかかってしまいます。

まとめ

椎間板ヘルニアは、突然発症し、可愛い愛犬が歩けなくなる可能性もある病気です。いくら気をつけていても防ぎようがないこともあります。しかし、どんなに重症な場合でも、異変に早く気付いて治療を行うことで神経へのダメージを最小限に抑え、後遺症が残らない可能性もあります。好発犬種を飼われている方は特にわんちゃんの様子を注意深く観察して、いざという時に慌てないで対応してあげてください。わんちゃんたちの一番の看護師さんはオーナーさまですよ。

(uw25rescueccnu) 育児をしながら臨床獣医師として勤務中、その傍でペットについて正しい知識を知ってもらいたいという思いから、執筆も手がけています。

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