腫瘍という言葉は、体のどこかに局所的に沢山の細胞が増えて塊を作った状態を意味します。そして、腫瘍の種類には良性と悪性がありますが、良性の場合は特別悪いことをするわけではありません。本来はない場所に塊があるという物理的な邪魔をするだけです。しかし、悪性の場合は、周りの組織を壊してしまったり、場合によっては別の場所にも転移して増えていく恐ろしいできもので、がんという言葉でも表現されます。

犬の口腔内腫瘍

 

ワンちゃんの場合も人間同様に、年齢と共にあちこちに腫瘍ができる可能性があります。例えば、発情前に避妊手術を受けていなかったメスのワンちゃんの多くが乳腺にぼこっとできる乳腺腫瘍になったり、あるいは去勢手術をしていなかったが為に肛門周囲腺腫と言って、お尻の周りにできる腫瘍に悩まされたり、はたまた、皮膚にできる脂肪腫と言って脂肪の塊だったり、と腫瘍の種類は非常に多いです。

中でも、口の中にできる腫瘍を口腔内腫瘍と言いますが、これは口の中と言う特殊な場所であるだけに、腫瘍のサイズが小さいと見つけにくく見逃されやすいものです。人間の場合は、口の中に違和感を感じてすぐに病院に行くと思いますが、ワンちゃんは何も言わないし、普段から口の中などはじっくり見ない方も多いと思います。ですから、以下のような代表的な症状で初めて気がついて受診することになる場合があります。

口腔内からの出血
口の周りや口腔内の腫れ
歯がぐらぐらする、抜ける
食べ方が変わる、或いはあまり食べたがらない
流涎(りゅうぜん、ヨダレが出る)
きつい口臭

腫瘍は成長してくると、歯茎にダメージがいくこともありますから、歯がぐらぐらして来たり、腫瘍そのものが破裂すると出血をします。そこから細菌感染を起こすと、とてもひどい臭いがしたりもします。当然、痛みが出れば食べたがらなくなったり、腫瘍の場所によっては飲み込みづらかったりします。その結果、痩せてしまうことも考えられます。

では、どんな腫瘍があるかと言いますと、良性ではエプーリス(歯肉腫)、ウイルス性のパピローマ(乳頭腫)、エナメル芽腫、などが挙げられます。また悪性では、メラノーマ(黒色腫、
ワンちゃんの悪性口腔内腫瘍で最も多いです)、扁平上皮がん、線維肉腫、血管肉腫、骨肉腫、などが代表的なものとされています。

しかし、これらの直接的な原因は明確ではありません。いくつかの報告では、例えばメラノーマはメスよりもオスに多く、犬種ではプードル、ドーベルマン、コッカースパニエル、ゴールデンレトリバーなどに多いとありますが、7歳以上の高齢になった時にはあらゆる犬種で発症するリスクは上がると言えます。そして、悪性であれば、残念ながら予後もあまり期待ができません。

犬における口腔内腫瘍の診断と治療

上記に挙げたような腫瘍は見た目だけでは確定診断には至りません。よく”カリフラワー状”と表現する腫瘍がありますが、実は同じようなものは沢山あります。ですから、必ずやらなければいけない検査があります。これをバイオプシー(生検)と言いますが、これは腫瘍の一部を搾取して組織を染色し、顕微鏡による病理検査(病理専門の獣医師による診断)を行うことです。腫瘍の一部を搾取するには、麻酔なしで簡単にできる場合と麻酔下で行う場合がありますが、これは治療に繋がる大変重要な検査です。また、全身のレントゲン検査やエコー検査で転移をしているかどうかを見ることも必要になって来ます。

診断が下ると、その腫瘍に適した治療が始まります。ほとんどの場合は外科的に切除をすることになります。ただし、悪性の腫瘍が転移している場合には全てを切除することは難しく、また一般的に腫瘍は境界線よりも大きく切除する為、ひきつれた顔になってしまったりすることもあります。更に、腫瘍の広がりによって手術の他に化学療法などが必要な場合もあり、飼い主さんにとっては厳しい試練になるかもしれませんが、ワンちゃんと一緒に頑張って乗り切って下さい。

犬における口腔内腫瘍の予防とケア

原因が明らかではない部分がある為、完璧な予防方法は提案しづらいのが現実ですが、早期に発見することで悪性であっても完治する可能性は期待できます。すなわち、普段から歯磨きをしっかりと行い、口腔内をのぞいたり、口臭の確認、あるいは舌などを触ってみたりすることが何よりも大事です。飼い主さん自らが気にして毎日の習慣として口を開けることをワンちゃんに教えてあげると、病院の診察でもチェックしやすくなります。
また、腫瘍は口腔内のみの話ではありません。全身の至る所でできる可能性があるので、特に皮膚の表面などを毎日触ってあげることが必要です。

rihomeopath

筆者紹介 東京出身、獣医師、医学博士、人と動物のホメオパス、馬と牛の多いノルマンディーで、フランス人夫と田舎暮らしを始めたばかりです。

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