改めて下痢の定義を考えてみますと、軟便との区別が難しいと思いますが、糞便中の水分の量が多めで液体に近い状態から液体までの便と言えるでしょう。
おそらく飼い主さんは、ワンちゃんが意外に下痢をすることに気づかれたと思います。ワンちゃんは見つけた物は何でも口の中に入れてしまう傾向があり、その為唾液はアルカリに傾いており、口の中に入ってきた細菌類を殺菌しようとします。
人間の場合は、噛み砕いた食物を唾液で消化し始めますが、ワンちゃんはほどんど噛み砕くことなく、食いちぎった物を吸い込むようにして食べ、胃に到達してから消化が始まります。
ですから、行動学的に見ても食べるには不適切な物を口にしていることが多く、結果的に下痢を招く可能性は人間よりも高いと言えます。
1目でわかるこの記事の内容!
下痢の分類
下痢は、回数や1回の量がどれぐらいか、色や粘り具合などによって以下のような分類ができます。
回数と量 |
便に含まれる血液の色 |
粘液 |
脂肪 |
体重減少 |
主な原因 |
|
小腸性下痢 |
増える |
黒色 |
多少あり |
場合による |
あり |
食餌、寄生虫、ウイルス、細菌、膵炎、腸リンパ管拡張症、etc |
大腸性下痢 |
量は減少か普通、回数はかなり増える(しぶり) |
鮮血あり |
多い |
なし |
多少あり |
寄生虫、ウイルス、細菌、腫瘍、アレルギー、ストレス、etc |
下痢の原因
上の表にいくつか原因を挙げていますが、具体的にどのようなものか、少し詳しく見ていきたいと思います。
下痢の検査と治療
絶対に行わなければならないのは、まず、糞便検査です。液状の便はとても持参しづらいと思いますが、できるだけ新鮮な状態で持参してもらいます。また、直腸検査と言って、肛門の触診を行ったり、レントゲンやエコー検査を実施します。
治療に関しては、体から水分が失われていることが想定されますから、点滴を必要とする場合がほとんどです。原因にもよりますが、下痢は体が害になる物を排出する反応でもあるので、急性の場合は基本的には下痢をすぐに止めてしまうような薬剤は様子を見ながら慎重に投薬することになります。
下痢による受診のタイミング
下痢が続いた場合、病院に行くタイミングというのは非常に難しい判断だと思います。幼犬や高齢犬の場合にはすぐに連れて行くのがベストですが、普段元気な成犬の場合は、
それとも、元気だったら様子を見てみる?
と悩まれると思います。答えはどちらもイエスであり、ノーでもあります。
まず、飼い主さんは普段からワンちゃんの性格や行動をよく観察されているので、’これはおかしいかも?’と直感的なものを感じたら受診するのは正解だと思います。もちろん、一度の下痢で止まっており、元気もある場合でも、念のため受診をする方が安心ではあります。
しかし、人間の忙しい生活条件の中、すぐに病院に連れて行けない場合が多いと思います。そう言った場合は、下痢の回数が何回であろうとも、元気がない、食欲がない、と言う状態を認めたら、すぐに受診すべきと考えて下さい。また、排便回数の変化もなく、元気や食欲も問題がなかった場合でも、三日以上便の状態に改善が認められない時には必ず受診しましょう。
rihomeopath
筆者紹介 東京出身、獣医師、医学博士、人と動物のホメオパス、馬と牛の多いノルマンディーで、フランス人夫と田舎暮らしを始めたばかりです。