人間社会でも高齢化が加速して来ていることもあり、高齢者の病気や治療が注目を集めています。その中でも、テレビなどでよく取り上げられたりするのが、高齢者のロコモティブシンドロームです。これは運動器と言われる、骨、関節、筋肉における異常の結果、普通に日常の動作ができなくなり、介護などが必要になる可能性のある状態を意味します。そして、残念ながらワンちゃんでも同じような状態になることはあり得るのです。
以前はワンちゃんの寿命が現在よりも短く、老化現象から来る障害のために介護をしている飼い主さんも少なかったと思います。しかし、人間同様に獣医療の発達やワンちゃんの飼い方の向上により、寿命がはるかに延びて来ました。その結果、高齢に達したワンちゃんたちが、ゆっくりしか歩けない、腰がふらつく、自分で排尿ができなくなった、といったような状態に直面する可能性は増えて来たと言えるでしょう。
また、原因に挙げられるものは老化現象だけではありません。生まれつき足腰が弱い場合、或いは神経を侵すような病気(感染症など)など、全く年齢とは関係ない場合もあります。
この運動器の異常で大抵問題になるのは”痛み”や”ふらつき”ですが、それらの症状の背後には、関節炎や背骨の歪み、筋肉の衰えなどが隠れています。しかし、老化現象や生まれつきだからと諦めず、普段から運動を適度に行って、しっかりとした食餌管理を行うことは病状の進行を遅らせることにもなります。また、歩いている姿にぎこちなさが無いか、座り方に異常がないか、と言ったような点を常に気にすることも重要です。

ロコモティブシンドロームの症状

ロコモティブシンドロームの症状は個体差がありますから、全てが一致する訳ではありませんが、多くのワンちゃんで初期に気付きやすい主な症状は以下の通りです。

明らかな筋肉の衰え
運動を嫌うようになる
ゆっくりと起き上がるようになる
ゆっくりと横になるようになる
関節の腫れが認められる
触ろうとすると嫌がる
尻尾をあまり振らない

例えば、抱っこをしようとしても怒って触らせてくれない、最近、お散歩に出かけると途中で帰りたがる、階段を上ったり、下りたりをやりたがらない、などの変化が見られた場合には、早めに健康診断を受診した方が良いでしょう。

ロコモティブシンドロームの診断と治療

上記にあるような症状の有無を参考に、一般的には歩き方のチェックや腫れている場所がないかなどの視診、更に四肢や首から尾にかけての触診、神経学的な検査やレントゲンが第一歩になります。例えば、背骨の異常(神経の異常が疑われる)であった場合などは、程度にもよりますが、MRIなどを使っての精密検査を必要とすることもあります。
治療に関しては、ほとんどの場合は痛みを伴っていることが多く、痛み止めを使ったり、数日の運動制限をしたりするところからスタートをします。しかし、運動制限も長期に行うと筋肉が更に弱くなってしまうため、痛み止めの反応を見ながら、少しずつ動きを加えていくことになります。
背骨の歪みなどから来る神経の圧迫(変形性脊椎症や椎間板ヘルニア)により、尿が出にくかったり、便が出ないなどの場合には、自宅でそれらを手伝ってあげる必要が出てきます。これは、治療に反応して改善する場合は問題ないですが、改善に乏しい場合は病院で指導してもらいながら自宅でケアしていくことになります。
現在は様々な薬剤や治療法があり、補助器具なども多数販売されていますから、重篤の場合でも飼い主さんの負担はかなり軽減されることが期待できます。

ロコモティブシンドロームのマネージメント

治療でも記したように、重症例は器具を使って介助してあげることも重要ですが、自分でできることは自分でさせる、という筋肉を鍛える立場も重要です。
また、人間と同様にマッサージをして筋肉の血液循環を促して活性化させたり、獣医師の処方の下に、処方食を与えたり、高齢犬のためのサプリメントを使用したりすることも有効です。そして、フローリングにはカーペットを必ず敷いてあげるなどの自宅の生活環境を少し工夫してあげることも必要です。ワンちゃんや飼い主さんによって、生活条件が異なりますから、獣医師と相談しながら取り組んでいきましょう。

注意点

ワンちゃんと生活している中で、普段、気軽にやってしまうことは小型犬の抱っこだと思いますが、抱っこの仕方は問題ないでしょうか?地面に垂直に抱っこすると、背骨を痛めることが多いです。基本的に地面と背骨が平行な状態になるようにして下さい。
そして、肥満は何よりも体に悪いことですから普段から月に1度から2度の体重測定を行なって下さい。症状が重篤で安静時に食餌量を調節していないと、意外と簡単に体重が増えていたりするものです。一度太ると、運動制限のある状態での減量はあまり楽ではありません。くれぐれも太らせないように注意して下さい。

 

rihomeopath

筆者紹介 東京出身、獣医師、医学博士、人と動物のホメオパス、馬と牛の多いノルマンディーで、フランス人夫と田舎暮らしを始めたばかりです。

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