わんちゃんをお家に迎え、ワクチン接種で動物病院にデビューしてあっという間に生後5ヶ月。ワクチン接種がようやくひと段落ついたその時、主治医の先生から、「避妊手術はお考えですか?」なんてお話もあるのではないでしょうか?考えてはいたものの、もうそんな時期なのか、などと思いながら後回しにしてはいませんか?
今回は、女の子の避妊手術についてです。避妊手術のメリット、デメリットはもちろん、最適な時期、そして手術の流れから費用まで分かりやすくお話しします。

犬の性周期

避妊手術についてのお話をする上で、まず、わんちゃんの性周期を簡単にお話しします。
わんちゃんは、生後およそ8ヶ月前後で初めての発情期を迎え、その後は個体差はありますが、だいたい6ヶ月間隔で発情を繰り返します。発情期中には外陰部から出血がみられ、出血は2〜3週間続きます。私たち人間では、排卵が終わった後、妊娠が成立しなかった場合には出血を起こします。それが月経です。
一方、わんちゃんは発情期の出血がおさまる頃、排卵が起こります。その後は、妊娠が成立していなくても妊娠した時のようなホルモンバランスになり、「偽妊娠」と呼ばれる時期になります。たとえ「偽」でも、出産間近になれば巣作りをし、出産後には母乳の分泌もみられます。わんちゃんによっては、好きなおもちゃを赤ちゃんに見立て、たとえ飼い主であっても、「赤ちゃん」に触れさせないことがあります。

避妊手術のメリット

では、避妊手術をするメリットについてお話しを進めます。
まず、手術では子宮や卵巣を取り出してしまいますので、発情がなくなります。その結果、出血みられなくなりますので、部屋が汚れることもなくなりますし、発情中にパンツをはかせなくてもよくなります。去勢手術をしていない同居犬がいる場合には、その子との隔離について考えなくてもよくなります。これは、私たち都合のメリットになりますね。

わんちゃんにとってのメリットは、何でしょうか。それは、病気を減らしてあげることです手術をすれば、もう、子宮や卵巣の病気にはかかりません。もちろん腫瘍もです。わんちゃんは、高齢になると、かなりの高率で子宮に問題を抱えます。その代表的なものが子宮蓄膿症と呼ばれる病気です。これは、子宮に膿が溜まる病気で、わんちゃんも辛く、手術をしても命を落としてしまうこともある怖い病気です。このような病気の心配から解放されます。

次に、早期に避妊手術をすると、乳腺腫瘍の予防につながります。乳腺腫瘍はわんちゃんの女の子で最も多い腫瘍で、人の3倍もの発生率だという報告もあります。犬の乳腺腫瘍は半分は良性、半分は悪性だと言われています。しかし、高齢になれば悪性が増える傾向にあり、手術による外科治療が第一選択となります。決して軽く考えられるものではなさそうですね。
それでは次にデメリットについてです。

避妊手術のデメリット

デメリットも私たちサイドからにしましょう。手術をすると、当然ながらその子の子供が残せなくなります。なので、避妊手術をするかどうかは、ご家族全員で充分に話し合っていただき、後悔のないようにしていただきたいです。

わんちゃんにとってのデメリットは太りやすくなってしまうことです。わんちゃんも、発情期や偽妊娠中には食欲がなくなる子が多いんです。そのため、普段、少し食べ過ぎていても食欲の無い時期に体重が減り、知らず知らずのうちに体重管理をしているんです。もちろん、手術の後も私たちが管理することで肥満は防ぐことができますのでご安心ください。

また、手術は全身麻酔です。入念な術前検査をしていても、万が一のことがないわけではありません。そのことも頭の片隅に入れておいてください。

避妊手術の時期

さて、手術をすることに決めたら、どのタイミングがよいのか、です。
手術はいつでもできます。しかし、メリットを最大限に生かすための時期というものがあるんです。そのメリットとは乳腺腫瘍の発生率と発情の関係です。初回発情の前に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の発生率は0.05%、初回発情から2回目の間に行うと8%、2回目の発情の後だと28%、であると論文での報告があります。発情が少なければ少ない程乳腺腫瘍の発生率は低くなります。この数字を見て、みなさんはどう思いますか…

参考論文:Managing The Canine Cancer Patient:A Practical Guide to Compassionate Care

また、発情中、発情直後には、子宮や卵巣が発達するので血管が太くなり、出血が多くなる可能性があるので、手術は行わない病院が多いです。
避妊手術は、絶対にしなければいけない手術ではなく、健康な子の体にメスを入れることになるので、問題のない状態で退院させる、というのが当然のことです。なので、できる限りリスクの無い状態で手術に入ることが必要なのです。

避妊手術の流れと費用

どの病院も、手術は予約制です。初診でなければ電話での予約を受け付けてくれるところもありますが、手術を前にまずは診察に行きましょう。

全身麻酔に備え、血液検査、胸部レントゲン検査を行います。検査に問題がなければ手術が可能です。

いよいよ手術を迎えます。全身麻酔にあたり、12時間以上の絶食と3時間以上の絶水が必要です。手術予定日の前日の晩御飯からは何も食べさせないように、そして、当日は朝起きたら水入れは下げるように指示している病院が多いと思います。この時、同居犬や同居猫に注意が必要です。うっかりご飯を食べてしまい、手術ができなくなることもあります。手術当日は、手術予定の子に合わせて、みんなで朝ごはんは抜きにしましょう。

病院に到着すると、血管にカテーテルを入れるなど、手術の準備をします。

麻酔がかかると、術部の毛刈りと消毒をし、スタートです。卵巣、子宮を摘出し、傷口を縫います。術後は傷口を舐めないよう、エリザベスカラーを装着したり、洋服を着せたりします。10日〜14日ほどで抜糸ができるので、それまではカラーや洋服を着用します。

術後は、当日退院し、翌日診察をする病院と、1日入院し、退院は翌日という病院に分かれます。どちらがよい、というわけではなく、病院の方針によるところが大きいです。退院の日程については希望を聞いてくれる病院もあると思いますので、事前に相談してみてください。
術後の生活は、普段通りにしてください。痛みのピークは術後2日〜3日です。退院後は日に日に元気になりますが、抜糸までは散歩は控え、シャンプーは禁止です。汚れが気になるわんちゃんは、術後の2日〜3日前までにシャンプーをしておくとよいですね。

筆者が勤めていた病院を基準に書かせていただきました。病院により多少ばらつきがありますが、これが大体の流れです。

最後に、費用についてです。

手術費用=術前検査+手術費用(麻酔、手術)+術後処置(消毒、ガーゼ交換、抜糸など) となります

体重によって手術費用は異なってきますが、体重3kgくらいのトイ・プードルで、トータルで4〜5万円ほどだと思います。地域や年齢によっても異なりますので、正確な金額は前もって通っている動物病院にお問い合わせいただくとよいでしょう。

まとめ

避妊手術については賛否両論、いろいろな意見があると思います。しかし、将来的なことを考えるとメリットが多いのものです。
避妊手術を悩んでみえる方も、手術について、家族で話し合ってみてください。このコラムが参考になれば幸いです。

(uw25rescueccnu)
育児をしながら臨床獣医師として勤務中、その傍でペットについて正しい知識を知ってもらいたいという思いから、執筆も手がけています。

病気になる前にドッグフードをチェック!!

スポンサードリンク

いいねするだけ!フェイスブックで最新記事をお届け

無料メルマガ配信中