マズル (muzzle)とは、ワンちゃんの細長く伸びた口の部分(短い短頭種もいます)ですが、この部分を手で軽く掴んでワンちゃんの行動を制御することを、マズルコントロールと言います。

例えば、動物病院などではワンちゃんは知らない人ばかりで緊張しており、怖がりな子は、何とかして自分の身を守ろうとする為、噛み付くことがよくありますから、マズルコントロールを行ったり、マズル(口輪)を装着します。

また、手がチラチラ動いたりした場合には本能的に噛み付く可能性がある為、ワンちゃんと接する仕事をしているプロの人達は、マズルコントロールやマズルを装着して口をしっかりと閉め、十分に落ち着かせて作業を行います。

犬のマズルコントロールの方法

具体的な訓練方法は以下の通りです。

①ワンちゃんを後ろから抱きかかえるような体勢を取ります。(小型犬は膝に乗せて抱っこ、大型犬は後ろからワンちゃんの背中に被さるような体勢)

②ワンちゃんは正面や上から手が伸びて来ると、恐怖を感じて噛み付きたくなりますから、抑える手は利き手を使って顎の下を撫でながら口へアプローチします。

③顎までたどり着いたら、下から親指と残りの指4本で口の周り(マズル)を包み込みます。下から包み込むことで、飼い主さんは脇を締めてマズルをしっかりと左右、上下、ワンちゃんの力に抵抗して動かすことができます。上から押さえると、脇が締められずに不安定になってしまうので注意しましょう。

④軽く抑えたまま、方向変換をさせても嫌がらないように、慣れるまで何度も繰り返してみます。ただし、一回に5分程度と時間を決めて飽きさせないことも必要です。

慣れていない場合には嫌がって噛み付こうとしたりしますから、最初の内は軽く口を触る程度までで我慢して、何度か繰り返してみましょう。

繰り返して行くうちに、明らかに飼い主さんにコントロールされていることが理解できるようになります。これは、元々ワンちゃんの母親が子供を教育する際にマズルを軽く噛んで制御していたことに由来します。

また、飼い主さんもコントロールに慣れたら、必ずしも抱きかかえ体勢をとらなくても、脇に抱え込んで(脇にワンちゃんを挟む)下から手を回す形でコントロールが出来るようになります。

犬のマズルコントロールの目的

マズルコントロールがうまく出来るようになると、ワンちゃんと生活していく上でメリットがいくつかあります。

①万が一、知らない人や知らない犬と接触した時に暴れたりした場合に、マズルコントロールで制止することができる。
→散歩道などで出会った人やワンちゃんに対して、とっさに飛びかかったり、逆に飛びかかられて防御しようとして噛み付くようなことになっても、飼い主さんの上手なマズルコントロールが効果を発揮します。ただし、しっかりと体勢を整えて対応しましょう。飼い主さんも噛み付かれる可能性があります。

②動物病院の診察で人見知りをしても、飼い主さんがマズルコントロールを行うことで診察がスムーズに行える。
→診察台に載せられたワンちゃんは緊張でカチカチになっていますが、飼い主さんがいつも自宅でマズルコントロールしてくれているのと同じ要領で行えば、ワンちゃんも少し気が楽になります。

③口腔内のチェックをしたり、歯磨きをする際に口をいじられても、嫌がらなくなる。
→いつも口の周りを触られていれば、口を開けたり、覗き込んだりしても抵抗がなくなります。口を開ける訓練も加えて行えば、歯磨きの訓練にも応用できます。

④無駄吠えしても、マズルコントロールですぐに大人しく出来る。
→口を抑えてしまえば、当然吠えることが出来ません。

犬のマズルコントロールに関する注意

例えば、噛み癖がある成犬のマズルコントロール訓練は、すでに歯が非常に大きくなっており、顎の強さも肉を食いちぎることの出来るレベルになっている為、飼い主さんだけで行うことは、危険を伴う可能性があります。

子犬を迎え入れた場合は、すぐに訓練をすることは環境の変化という大きなストレスから体調を崩しやすく、最低でも10日ほど様子を見てから行いましょう。また、子犬は歯が細く、噛まれるとそれなりに痛みがありますから、初めは手袋をするなどの工夫もして下さい。

小さいお子さんがいる場合には、いつも静かにしてもらい、子犬をはしゃがせないように、ちょっかいなどを出さないことを指示して下さい。マズルコントロールの訓練状況は、お子さんには見せないようにしましょう。ワンちゃんの気が散って混乱してしまいます。

成犬の場合も子犬の場合も、飼い主さんの間違った判断で訓練をスタートすると、思わぬ方向にワンちゃんが理解して逆効果になることもあります。いずれの場合も、必ず一度、トレーナーや獣医師にアドバイスを聞いてから実践して下さい。

rihomeopath

筆者紹介 東京出身、獣医師、医学博士、ニューヨークで人と動物のホメオパシーを4年間学び、日本では小動物臨床を10年ほど経験。馬と牛の多いノルマンディーで、フランス人夫と田舎暮らし中。

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