尿石症とは尿路結石症とも言われており、単純に言えば’尿に石が出る”病気です。

尿路とは尿が作られる腎臓から尿管、膀胱、尿道、の一連の器官ですが、石(結石)はこれらのどこの場所でも見つかる可能性があります。犬の場合は5%が腎臓や尿管で見つかり、85%以上が膀胱や尿道で見つかるため、膀胱結石として診断される例がとても多いです。

結石ができる一つの原因は人間と同様に食餌と言われており、それ以外にはストレスや冬場などの水分摂取量の低下、尿pH、細菌感染、遺伝的背景、などが挙げられます。これらが複雑に関係して、その結果、尿の結石成分が過飽和状態になり、やがて結晶が出来ます。結晶はそのまま成長して結石となります。

結石の種類は、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)、シュウ酸カルシウム、尿酸、ケイ酸、シスチン、などがあり、これらの成分が単一の場合もありますが、混ざっていることもあります。結晶の重さの95%はこのミネラル成分ですが、残り5%は、粘膜などが含まれています。

犬の尿石症(尿路結石症)の症状

尿に結石が出来た場合の症状は個体差もありますが、主なものは以下のようになります。

・頻尿(何度も排尿を試みるが、少量しか出ない)
・血尿(結石が膀胱壁などを傷つける)
・陰部を舐める(不快な為)
・尿が出ない(緊急事態)

しかし、中にはあまり症状がわからないワンちゃんもいます。症状がある場合には尿検査とレントゲン撮影を行なって、尿結石の存在を確認しますが、レントゲンに写らない結石もあります。
結石が尿道などにつまってしまうと、尿が出なくなります。その後、急性腎不全を起こして、場合によっては亡くなってしまうことがあるので、尿が出てないことに気づいた場合は、早急に結石を除去する処置が必要になります。

犬の尿石症(尿路結石症)のになりやすい犬種

この病気はどの犬種もなる可能性がありますが、中には特になりやすい犬種もいます。

・リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)

一般的にメスが多いと言われています。

ミニチュア・シュナウザー
ビション・フリーゼ
コッカー・スパニエル
ミニチュア・プードル

・シュウ酸カルシウム

一般的にオスが多いと言われています。

ミニチュア・シュナウザー
ミニチュア・プードル
ヨークシャー・テリア
ラサ・アプソ
ビション・フリーぜ
シーズー
ケアン・テリア

・尿酸

一般的にオスが多いと言われています。

ダルメシアン(特に遺伝的に尿酸の代謝が悪い)
イングリッシュ・ブルドッグ
ミニチュア・シュナウザー(PSS)*
ヨークシャー・テリア(PSS)*

* PSS: Portosystemic Shunt (門脈体循環シャント)は、胃腸から肝臓へ流れる血管の途中に異常な血管があることで、肝臓で解毒されるべき血液が全身に回ります。その結果、尿酸結石の原因になるアンモニアや尿酸が蓄積しやすくなります。この2犬種は PSSの好発犬種でもあります。

・シスチン

一般的にオスが多いと言われています。

ダックスフンド
バセット・ハウンド
イングリッシュ・ブルドッグ
ヨークシャー・テリア
アイリッシュ・テリア
ロットワイラー
チワワ
マスティフ
ティベタン・スパニエル

・ケイ酸

一般的にオスが多いと言われています。

ジャーマン・シェパード
ゴールデン・レトリバー
ラブラドール・レトリバー
イングリッシュ・シープドッグ

犬の尿石症(尿路結石症)の治療

尿石症(尿路結石症)と診断された場合、症状に応じて抗生物質や消炎剤などを使いますが、まず、一番最初に理解しなければいけないことは、この病気は食餌療法(英語でこれをダイエット(diet) と言います)が治療の柱になるということです。食餌の成分が偏ったものであると、結石が出来やすい状態になる為、療法食以外は食べてはいけません。

結石が尿道で閉塞(詰まる)した場合には、緊急処置として尿道にカテーテルを入れて閉塞解除を実施して膀胱洗浄を行います。この時点で、ワンちゃんはぐったりしている場合も多く、危険な状態に陥ることもあります。
結石が非常に大きく、自然排泄が期待できない、或いは食事療法で尿のpHを酸性にして結石が溶ける可能性がないタイプの結石は、外科的に手術で取り出すことが必要になります。

犬の尿石症(尿路結石症)の療法食の例

食物アレルギーや環境に対するアレルギー(アトピー性皮膚炎)のワンちゃん達が、獣医師に”処方された”療法食しか食べてはいけないように、この病気も一般食を食べると症状が出てしまい、また結石が再発してしまいます。以下に例を挙げてみます。

・リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)の場合の例

ヒルズ

s/d :アルカリ性で形成されるストルバイトを溶かすフード、マグネシウムとリンを制限、尿pHを酸性に維持。

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c/dマルチケア:ストルバイトが形成されないように維持するフード、マグネシウム、リン、カルシウムを調整し、ストルバイト溶解時の管理、シュウ酸カルシウム尿石の形成にも配慮。膀胱壁の健康維持配慮にグルコサミン、コンドロイチン配合。

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エランコ ドクターズケアシリーズ

 

ストルバイトケア:ストルバイトが形成されないようにするフード、マグネシウム・リンが制限、フード中のミネラル・アミノ酸バランスを調整、尿pHを弱酸性に維持。

・食物アレルギーがあり、シュウ酸カルシウム結石の場合の例

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ロイヤルカナン

低分子プロテイン+pHコントロール:食物アレルギーなどのアレルギー反応が起こりにくい低分子ペプチド(加水分解大豆タンパク)を使用、尿中のストルバイトやシュウ酸カルシウムの飽和度が高くないようにミネラル調整。

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・ダルメシアンの尿酸結石の場合

ヒルズ

u/d:カルシウム、蛋白質、などの制限をしてストルバイト以外の結石に対応。高品質・高消化性の蛋白質使用、ナトリウムとリンを制限して腎臓保護。

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犬の尿石症(尿路結石症)の療法食に関する注意

この病気は再発しやすいことから、療法食のみと飼い主さんに伝えていますが、意外に多くの飼い主さんが獣医師の指導なしに一般食に変更しており、再発しています。

アレルギー食であれば、皮膚をかきむしる姿で飼い主さんは再発に早く気がつきますが、膀胱の中に結石が出来る過程は外からわかりません。ですから、症状が出た時には重症化していることもあります。療法食は治療薬と同じであることを、根本から理解し直さなければなりません。どんなにフードを変えてみたいと思っても、絶対に獣医師の指導無しに行ってはいけません。

rihomeopath

筆者紹介 東京出身、獣医師、医学博士、ニューヨークで人と動物のホメオパシーを4年間学び、日本では小動物臨床を10年ほど経験。馬と牛の多いノルマンディーで、フランス人夫と田舎暮らし中。

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