環軸椎とは環椎と軸椎をまとめた呼び方になります。まず、これらがどこにあるか、それを明確にしておきましょう。
人間と同じ脊椎動物である犬の体の軸を作っている背骨は、椎骨という骨が並んでいます。これは首から尾に向かって、頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎、という部分に分かれており、首の部分である頸椎には人間と同様に 7個の椎骨が並んでいます。その一番最初(頭に最も近い)を環椎(第一頸椎)、その次の二番目を軸椎(第二頸椎)と呼びます。

普通、椎骨と椎骨の間には、よく耳にする”椎間板ヘルニア”でおなじみの”椎間板”と呼ばれるクッションがありますが、環椎と軸椎の間にはありません。その代わり、軸椎にある歯突起(しとっき)という部分を中心に靭帯によって固定されており、頭を回転させたりすることが可能になります。犬の環軸椎亜脱臼(環軸椎不安定症とも言います)とは、この2つの椎骨が並んでいる部位が不安定になり、それによって脊髄を刺激し、痛みや起立障害などが出る状態です。

犬の環軸椎亜脱臼の原因

この病気の多くが先天性ですが、中には後天性で発症することもあります。

先天性:1歳以下で症状が現れることが殆どです。環軸椎の不安定な状態は、生まれつき軸椎の歯突起が無形成であったり、形成不全(完全に形成されていない)、或いは、この部位を安定させる靭帯の緩みなどが原因と考えられています。先天性に発症しやすい犬種には、小型犬、特にトイプードル、チワワ、ヨークシャーテリア、ペキニーズ、ポメラニアン、狆、などが挙げられます。
後天性:例えば、事故により極端な前屈姿勢で首を曲げた状態になって、靭帯が切れてしまった場合などがあります。また、先天性でも長い間症状が見られなかった場合に、事故がきっかけで症状が重度になって現れることもあります。

犬の環軸椎亜脱臼の症状

症状は徐々に出てくる場合と、突然出てくる場合があります。外からわかる症状は、患部の状態によってかなり変わりますが、主なものは以下の通りです。

首に関わる症状

・首のこわばり
・首を回すことを嫌がる
・首の痛み
・首を動かさずに上目遣いをしたりする
・不自然に首を傾ける
・下を向かない

これらの症状は、すべて首の痛みが関連しています。首を動かすと痛い為、上を向かないようにして上目遣いになってみたり、下を向いてご飯を食べることも辛く感じて、あまり食べたがらなかったり、或いは首を触ろうとすると非常に嫌がる態度を示します。

神経に関わる主な症状

・四肢の脱力
・歩行障害
・不自然な歩様
・起立困難
・突然の虚脱
・首から下の部分の麻痺
・呼吸困難

神経(脊髄)を圧迫したり、傷つけることで、四肢の脱力や麻痺、歩行障害などが現れることがあります。また、重症な場合には、尿漏れや呼吸がしづらくなる、或いは呼吸停止といった症状に陥ることがあります。

犬の環軸椎亜脱臼の治療

まず、診断はレントゲンだけではなく、全身麻酔下でのCTやMRIなどの詳しい検査が必要になります。症状が軽度の場合には、内科的な治療法を行います。主に鎮痛剤や消炎剤の内服薬と首にはコルセットをはめて首を伸ばした状態に維持し、ケージレスト(ケージの中でじっとしてもらう、絶対安静)を指示されます。しかし、一時的に症状は治まっても根本的な問題は残されたままで、完治は望めません。最終的には症状の進行状態により外科手術が行われます。問題になっている不安定な二つの椎骨を固定することで、症状は改善して行きます。外科療法も絶対安静の期間は大抵数週間を必要とします。

犬の環軸椎亜脱臼の予防

先天性が多く、かかりやすい犬種が挙げられることから、特に小型犬の子犬を飼い始めたら、普段の動作を細かく観察して、少しでも首に違和感があるようでしたら、健康診断がてら、獣医師に相談してみましょう。早期に病気が発見されることで、予後も大きく変わってきます。また、交通事故や落下などによる外傷で起こる可能性もありますから、小さい子に抱っこをさせて落とす、肩に乗せて落とす、屋外でリードを離して事故に遭う、などが起こらないように注意しなければなりません。

rihomeopath

筆者紹介 東京出身、獣医師、医学博士、ニューヨークで人と動物のホメオパシーを4年間学び、日本では小動物臨床を10年ほど経験。馬と牛の多いノルマンディーで、フランス人夫と田舎暮らし中。

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