犬のリンパ腫をご存知ですか?わんちゃんの腫瘍の中でも比較的多く発生する腫瘍です。動物病院でも、「顎の下にしこりがある」としこりに気付かれて来院される方も多くいらっしゃいます。しかし、しこりがあるからといって全てが腫瘍というわけではありません。今回は犬のリンパ腫についてです。今回はリンパ腫について、どんな病気なのか、治療や予後についてお話しを進めます。

リンパ腫ってどんな病気だろう?

リンパ腫とはどんな病気なのでしょうか。見ての通りなのですが、分かりやすく言うとリンパ球の腫瘍です。
リンパ球って何だろう?という方もおられると思いますので、まずはリンパ球のはたらきについて少しお話をしたいと思います。リンパ球は大まかに言うと体を守ってくれる細胞のことです。体に入ってくるバイ菌や癌細胞などに対して攻撃をしかけ、体に悪影響が出ないようにしてくれます。
リンパ球は主にリンパ節に存在します。リンパ節というのはは分かりやすくいうとフィルターです。病原体などの体にとって有害なものを集め、リンパ球が処理をします。

リンパ腫の種類

リンパ球は体中に分布するので、体のどこにでもできる可能性はありますが、できやすい部位があります。病変が出る部位により種類分けをし、それぞれに特徴があります。わんちゃんでは多中心型リンパ腫が大部分を占め、この他、消化器型リンパ腫、縦隔型リンパ腫、皮膚型リンパ腫などがあります。
さらに、主にどの種類のリンパ球が腫瘍になるのか、そしてその悪性度によって細かくタイプ分けをします。

⚫︎多中心型リンパ腫
体表リンパ節に病変が出ます。わんちゃんのリンパ腫で最も多いタイプのリンパ腫です。
体表リンパ節というのは首の周り、後肢の付け根、膝の後ろなどに位置していて、体の表面に近い場所にあり、腫れた時に気付きやすいです。この体表リンパ節が1箇所〜複数箇所腫れるのが特徴です。
⚫︎消化器型リンパ腫
消化管でも、主に小腸に病変が出ます。腸の組織にリンパ球が増殖し、粘膜が肥厚します。それと同時に、腸のリンパ節が腫れたり、進行すれば脾臓や肝臓に転移をすることもあります。
⚫︎縦隔型リンパ腫
胸の中、ちょうど心臓の頭側にあるリンパ節に腫瘍ができます。初期には症状が出にくいこともあり、症状が出た時には腫瘍が大きくなっていることが多いです。
⚫︎皮膚型リンパ腫
皮膚に病変が出ます。初期には皮膚炎と区別がつきませんが、どんな治療にも反応しにくい難治性の病変です。たとえ診断がついてもなかなか治療効果が上がらず、安楽死されるケースもあります。

この他、脳やなどの中枢神経、腎臓に発症することもあります。

さらに、腫瘍になる細胞の種類により、B細胞型、T細胞型などと分類します。細胞の種類により、抗がん剤の効き目も違ってくるので、治療方針の決定や予後判定のために細胞型は大切になります。

リンパ腫の症状

リンパ腫になったらどんな症状が出るのか、どんな症状が要注意なのか、代表的なものを挙げていきますね。

⚫︎多中心型リンパ腫
首の周り、特に顎の下、脇の下、内股や膝の後ろなどにしこりができます。
首回りや顎、耳の下のしこりは頚部のリンパ節が腫れている可能性があります。首の周りのリンパ節は頭部を守るための大切な関所なので、たくさんのリンパ節が存在します。リンパ節は口内炎や外耳炎でも腫れることはありますので、リンパ節の腫れがリンパ腫に結びつくわけではありませんが、複数のリンパ節や他の部位のリンパ節が腫れている場合にはリンパ腫の可能性が高いです。
脇の下、内股などは炎症性で腫れることはあまりありません。ひどい皮膚病などがないのに腫れている場合には心配です。
⚫︎消化器型リンパ腫
嘔吐や下痢が続き、体重が減るなどの消化器症状がみられます。もちろん、炎症性腸疾患などでも同じような症状がみられることもありますが、これらの症状は心配な症状ですので早めに診察を受けましょう。
⚫︎縦隔型リンパ腫
呼吸がおかしい、苦しそうなど、呼吸器系の症状が出ます。
腫瘍が原因で胸水が溜まることもあり、呼吸状態が悪くなります。それに伴い、元気や食欲が低下したりなどという症状が出ます。
⚫︎皮膚型リンパ腫
初期には感染性の皮膚炎のように見えますが、進行すると赤みを帯びて隆起し、やがて潰瘍を起こします。
リンパ腫の診断

それでは、リンパ腫かどうかの診断について触れていきます。
リンパ節の腫れがある場合には、そのリンパ節から針で細胞を採り、専門の検査機関で調べてもらいます。診断がつかない場合には、リンパ節の一部または全体を切除して検査をします。
消化器型の場合には内視鏡や手術により腸の一部を採り、皮膚の場合には病変部の一部を採り、同様な検査をします。
どんな場合にも、『見た目』や『症状』ではなく、疑わしい場所の細胞や組織を採って、専門機関での検査をします。

リンパ腫の治療と予後

最後に気になる治療とその予後についてです。
治療は、化学療法、つまり抗がん剤を用いて行います。効果を上げるため数種類の抗がん剤を組み合わせて数ヶ月間に渡って治療を行うことが一般的です。
治療を行っても乳腺腫瘍などのような固形癌とは違い、腫瘍を手術で取り切ることができないため、腫瘍細胞を完全にゼロにすることはできません。このため、治療に反応して、しこりが消失しても『完治』ではなく『寛解』という言葉を使います。治療の目標は完全寛解で、完全寛解した状態をより長期間維持できることを目指します。
無治療だと余命が半年未満というデータもありますが、治療効果がうまく出れば完全寛解を望め、1年以上も維持することも可能です。
予後は腫瘍になる細胞がB細胞である方が良好であると言われています。これは、B細胞型のリンパ腫の方が治療に対して効果を示しやすいからです。また、治療開始時に発熱や食欲不振などの全身症状が出ていないということも良好な予後には大切な因子だと言われています。

まとめ
大切な愛犬には病気にはなって欲しくないものですよね。しかし、わんちゃんにも腫瘍性疾患は年々増加しています。リンパ腫は残念ながら完治を望むことが難しい腫瘍です。しかし、早期発見で良好な予後も期待できます。しこりができても怖がらずに、早目に動物病院で診察を受けるようにしてください。

(uw25rescueccnu)
育児をしながら臨床獣医師として勤務中、その傍でペットについて正しい知識を知ってもらいたいという思いから、執筆も手がけています。

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